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科学を知ろう:薬とサプリメントの相互作用
Know the Science: How Medications and Supplements Can Interact
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2024年12月
はじめに
多くのアメリカ人が、処方薬や市販薬と一緒にダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)を利用しています。
時に、薬とサプリメントを一緒に飲むことで、思わぬ影響が出ることもあります:
- 薬の効果を増強させる
- 薬の効果の減弱させる
- 薬との有害な相互作用を起こす
そのため、利用しているダイエタリーサプリメントと薬について、今かかっている医療機関※に相談する必要があります。
今かかっている医療機関※に相談する方法、サプリメントと薬の相互作用の種類、サプリメントのラベルの読み方や理解の仕方について詳しく学び、続いて得た知識をテストしてみてください。
今かかっている医療機関※に相談しましょう
飲んでいるあらゆるダイエタリーサプリメントと薬について、今かかっているすべての医療機関※に伝えることが重要です。そうすることで有害な相互作用を避けることが可能です。
初めて医療機関を訪れると、どのような薬やサプリメントを飲んでいるか尋ねられることがよくあります。この情報は、医療機関を受診するたびに必ず更新してください。以下のようなリストを持参するとよいでしょう。
- サプリメントを含む、処方薬および市販薬のすべて
- 飲む頻度
- 用量
製品の容器をそのまま医療機関に持参してもよいでしょう。そうすることで、医療機関はダイエタリーサプリメントに含まれる成分に関するあなたの質問に答えやすくなります。
がんやHIV治療薬との相互作用
ダイエタリーサプリメントやハーブのサプリメントが、がんやHIVの治療効果を阻害するのではないかという懸念が高まっています。がんやHIVの治療を受けている人は、すべてのサプリメントの使用について今かかっている医療機関※に相談してください。
サプリメントの中には薬の効果や副作用を増強させるものがあります
時に、薬とサプリメントを一緒に飲むことで、薬の効果を増強させるかもしれません。その結果、薬の効き目が強くなりすぎ、望ましくない副作用が起こるリスク(危険)が高まる可能性があります。
例えば グルコサミンは、ワルファリン(クマディン)などの抗凝固薬(抗凝血剤)の効果を増強させる可能性があり、これにより深刻なあざや出血のリスク(危険)が高まることがあります。
アシュワガンダ には鎮静作用があるようで、ベンゾジアゼピン系(バリウム/Valium)やザナックス(Xanax)などの鎮静薬や抗不安薬の効果を増強させる可能性があるという予備的結果もあります。

サプリメントには薬の効果を減弱させるものがあります
時に、薬とサプリメントを一緒に飲むことで、薬の効果を減弱させるかもしれません。これは、今かかっている医療機関※が想定している薬の効果を、あなたが十分に得られないこと意味します。
人気のハーブ系サプリメントであるセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、薬の効果を減弱させることが知られています。体内で薬を不活性物質に変えるプロセスを速めることによって、薬の効果を減弱させます。
セントジョーンズワートの影響を受ける一般的な薬には、以下のようなものがあります:
- 抗うつ薬
- 経口避妊薬(避妊用ピル)
- シクロスポリン(Cyclosporine)(移植臓器に対する身体の拒絶反応を防ぐ)
- ジゴキシン(Digoxin)、イバブラジン(Ivabradine)などの一部の心臓病治療薬
- インジナビル(Indinavir)やネビラピン(Nevirapine)などの一部のHIV感染症治療薬
- イリノテカン(Irinotecan)やイマチニブ(Imatinib)などの一部の抗がん剤
- ワルファリン(Warfarin)および類縁の抗凝固剤(抗凝血剤)
- シンバスタチン(Simvastatin)などの特定のスタチン系薬剤
最近の研究によると、健康な成人にゴールデンシール(ヒドラスチス)抽出物(エキス)とメトホルミンを投与したところ、メトホルミン(2型糖尿病患者に最もよく処方される薬)の濃度が約25%低下しました。この低下は、メトホルミンを服用している2型糖尿病患者の血糖値コントロールを潜在的に妨げるのに十分なものです。
さらに、多量の緑茶は、高血圧および心臓疾患に使用されるβ遮断薬であるナドロールの血中濃度を低下させ、その効果を減弱させることが示されています。また、ほかの医薬品と相互作用を引き起こすかもしれません。

市販薬との相互作用
薬の相互作用というと、多くの人が処方薬のことだと考えます。
しかし、処方箋なしで入手できる薬の中には、サプリメントと相互作用するものもあります。
ブラックコホシュおよびセントジョーンズワートサプリメントは、フェキソフェナジン(アレグラ/Allegra)の効果を妨げるかもしれません。さらに、ゴールデンシール、セントジョーンズワート、クラトム、カンナビジオール(CBD)は、処方箋なしで入手できるものも含め、多くの薬と相互作用するかもしれません。
市販薬とダイエタリーサプリメントの両方を飲むことを検討している場合、起こりうる相互作用について、今かかっている医療機関※に相談しましょう。
薬とサプリメントの相互作用の中には、深刻なものもがあります
薬とサプリメントの相互作用が特に重要になる状況が2つあります。
- 医療従事者が「治療域が狭い」と呼ぶ薬を服用している場合
- 手術を受ける場合
このような状況では、現在摂取しているダイエタリーサプリメントや今後摂取を検討しているダイエタリーサプリメントについて、今かかっているすべての医療機関※に相談することが特に重要です。
治療域が狭い薬

特定の薬が体内に適切なレベルで存在することは非常に重要です。薬の量が少しでも少なかったり多すぎたりすると、生命を脅かしたり、人生を左右するような深刻な反応を引き起こす可能性があります。
このような薬は、「治療域が狭い」または「治療指数(治療係数・安全域)が狭い」と言われています。治療域の狭い薬では、相互作用が特に懸念されます。
治療域が狭い薬の例:
- カルバマゼピン(発作抑制薬)
- シクロスポリン(移植臓器の拒絶を防ぐ薬)
- ジゴキシン(心臓病治療薬)
- フェニトイン(発作抑制薬)
- ワルファリン(抗凝固薬、抗凝血薬)
手術を受ける場合:
手術を受ける際は、できるだけ早く今かかっている医療機関※に相談し、摂取しているすべてのダイエタリーサプリメントを伝えましょう。
一部のダイエタリーサプリメントは、以下の理由により手術中に問題を引き起こすかもしれません。
- 手術前、手術中、手術後に投与される麻酔薬や他の薬に対する反応に影響を与えるかもしれません。
- 出血のリスク(危険)を高めるかもしれません。
- 心拍数や血圧に深刻な変化を引き起こすかもしれません。
待機手術(事前に手術予定日を決めることができる)では、今かかっている医療機関が手術の数週間前に、すべてのハーブ系サプリメントの中止を患者に求める場合があります。
ヒント:緊急手術の場合は、前もってサプリメントの摂取を中止することができません。しかし、万が一の問題に備えるため、あなたやあなたの大切な人が、外科医や麻酔科医に、あなたが摂取しているすべてのダイエタリーサプリメントについて伝えておくことは重要です。
サプリメントのラベルを読むためのヒント
時として、ダイエタリーサプリメントのボトルに何が入っているか明確でない場合があります。
サプリメントに何が含まれているかを確認するには、製品ラベルの「サプリメント成分表示」欄を確認しましょう。製造者は、サプリメントのすべての成分をこの表示欄に記載することが義務付けられており、サプリメント成分表の中またはその下のその他の成分の一覧に各種成分が記載されています。
米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)には、不当表示されたダイエタリーサプリメントが市場に出回った場合、それを取り締まる権限があることを知っておくことが重要です。さらに、非営利団体である米国薬局方(U.S. Pharmacopoeia:USP)の栄養補助食品検証プログラムやConsumerLab.com [英語サイト] のような独立した第三者機関によってテストされたことを示すラベルが付いた製品は、そのダイエタリーサプリメントがラベルに記載されている成分を含み、高品質であり、他の物質によって汚染されていないことや不純物が混入していないことを確認にする良い方法です。

知識を試そう
薬とサプリメントの相互作用について学んだことを確認するために、簡単なクイズを受けてみましょう。
問題:一部のサプリメントは薬の効果を減弱させる可能性がありますか?
- ある
- ない
- 正解
-
ある
解説:
例えば、セイヨウオトギリソウは、経口避妊薬の効果を減弱させ、不正出血や意図しない妊娠のリスク(危険)を高める可能性があります。ゴールデンシールというハーブは、血糖値コントロールを阻害し、体内の血糖値を上昇させるメトホルミンという薬のレベルを低下させる可能性があります。
問題:サプリメントには、薬の効果(望ましくない副作用を含む)を増強させるものもありますか?
- ある
- ない
- 正解
-
ある
解説:
例えば、カバ(kava)は、消化器系の不調、頭痛、めまいなどの副作用を引き起こす可能性があります。抑うつ作用があるため、カバは運転や機械操作の能力に影響を与える可能性があり、バリウム(Valium )やザナックス(Xanax)などの中枢神経抑制剤と併用すべきではありません。
問題:サプリメントと薬の相互作用の中には、非常に危険なものもありますか?
- ある
- ない
- 正解
-
ある
解説:
例えば、相互作用は、移植された臓器が拒絶されるのを防ぐ薬など、極めて重要な薬の効果を減弱させる可能性があります。
問題:研究者たちは、薬とサプリメントの相互作用について多くのことを知っていますか?
- 知っている
- 知らない
- 正解
-
知らない
解説:
多くの薬やサプリメントの相互作用の可能性に関する情報はわずかです。
問題:今かかっている医療機関以外に、あなたが飲んでいるすべての薬とサプリメントについて知る必要があるのは、次のうち誰ですか?
- 今かかっている歯科医
- 循環器専門医や皮膚科専門医など、受診する専門医
- 眼科専門医
- 救命救急室または緊急医療機関で治療を行う医療専門家
- カイロプラクターやナチュロパシーの施術者(自然療法士)など、あらゆる補完療法の施術者
- 上記のすべて
- 正解
-
上記のすべて
解説:
あなたが有害な相互作用を避けることができるように、上記の全員がこの情報を必要としています。
問題:以下のハーブのうち、多くの薬の効果を減弱させるものはどれですか?
- ブラックコホシュ(Black cohosh)
- エキナセア(ムラサキバレンギク、echinacea)
- ノコギリヤシ(Saw palmetto)
- セントジョーンズワート(St John's Wort)
- 正解
-
セントジョーンズワート(St John's Wort)
解説:
セントジョーンズワートは多くの薬の効果を減弱させる可能性があります。
問題:特定の薬が体内に適切なレベルで存在することは非常に重要であり、薬によっては、その効果がわずかに増強したり減弱したりすると、重篤な合併症や命を脅かす合併症が起こる可能性があります。
上記の説明は以下のどの言葉を説明していますか。
- 治療域が広い薬
- 治療域が狭い薬
- 相互作用のある治療域
- 正解
-
治療域が狭い薬
解説:
薬の量が少しでも少なかったり多すぎたりすると、生命を脅かしたり、人生を左右するような深刻な転帰を引き起こす可能性があります。相互作用は、治療範囲が狭い薬では特に懸念されます。そのため、飲んでいるすべての薬やサプリメントについて、今かかっている医療機関※に相談することが重要です。
問題:手術の予定がある場合、医療従事者は事前にダイエタリーサプリメントの摂取を中止するように指示することがあります。その理由は以下のどれですか?
- 手術前、手術中、手術後に必要な薬への影響を与える可能性がある
- 手術中の出血リスク(危険)を高める可能性がある
- 心拍数に変化を引き起こす可能性がある
- 血圧に変化を引き起こす可能性がある
- 上記のすべて
- 正解
-
上記のすべて
解説:
ダイエタリーサプリメントの中には、手術前、手術後、手術中に服用する必要のある薬と有害な相互作用を起こすものもあります。心拍数、血圧、出血リスク(危険)の危険な変化を避けるため、医療従事者は手術の2~3週間前にダイエタリーサプリメントの摂取を中止するよう指示することがあります。
さらに詳しく
サプリメントと薬の相互作用や、サプリメントの安全性に関する詳細については、次の情報源をご利用ください。
- 今かかっている医療機関※や薬剤師に尋ねる
- 米国国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health)のダイエタリーサプリメント [英語サイト]とハーブ [英語サイト]に関するウェブサイト
- サプリメントについて知っておくべき5つのこと
- 米国国立衛生研究所のダイエタリーサプリメント室(Office of Dietary Supplements at the National Institutes of Health)[英語サイト]
- 米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)[英語サイト]
- 米国国立医学図書館(National Library of Medicine:NLM)が提供するMedlinePlus [英語サイト]
より多くの情報を調べるには 「科学を知ろう」をご覧ください。
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
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更新日:2025年3月10日
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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