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マグネシウム
Magnesium

- 写真に掲載している食材の成分表一覧
[補足]
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等はアメリカ人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご覧ください。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省)
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版改訂年月(翻訳時):2020年3月24日
このファクトシートは一般向けの平易なマグネシウムの概要です。詳細については、「医療関係者向け:マグネシウム」をご覧ください。
マグネシウムとは?その働きは?
マグネシウムとは、体を健康に保つために必要な栄養素です。マグネシウムは、筋機能や神経機能の調節、血糖値や血圧、さらにはタンパク質、骨、 DNA の生成など、体内の多くのプロセスにとって重要です。
マグネシウムの必要摂取量は?
マグネシウムの必要摂取量は、年齢および性別によって異なります。下表に1日の平均摂取推奨量を、ミリグラム(mg)で示します。
ライフステージ | 摂取推奨量 |
---|---|
生後0-6カ月 | 30 mg |
幼児7-12カ月 | 75 mg |
子供1-3歳 | 80 mg |
子供4-8歳 | 130 mg |
子供9-13歳 | 240 mg |
10歳代男子14-18歳 | 410 mg |
10歳代女子14-18歳 | 360 mg |
男性 | 400–420 mg |
女性 | 310-320 mg |
10代の妊婦 | 400 mg |
妊娠中の女性 | 350-360 mg |
10代の授乳婦 | 360 mg |
授乳婦 | 310-320 mg |
どのような食物からマグネシウムを摂取できますか?
マグネシウムは、多くの食物に自然に含まれ、また、食物に添加されることもあります。以下のようなさまざまな種類の食物を食べることで、推奨量のマグネシウムを摂取することができます。
- マメ科植物、ナッツ類、種子類、全粒粉、緑色の葉野菜(ほうれん草など)
- 朝食用栄養強化シリアル類や他の栄養強化食物
- 牛乳、ヨーグルト、そのほかの一部の乳製品
どんなマグネシウムサプリメントが市販されていますか?
マグネシウムは多くのマルチビタミン・ミネラルサプリメントやそのほかのサプリメントから摂取することができます。サプリメントに含まれるマグネシウムの中で体内に吸収されやすいものは、アスパラギン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マグネシウムです。
マグネシウムは、一部の緩下剤や、胸やけ、消化不良を治療するための製剤の一部にも含まれています。
充分にマグネシウムは摂取できていますか?
アメリカ人の多くは、マグネシウムの推奨量を満たした食事をしていません。70歳を超える男性と10代の少年少女は、マグネシウムの摂取量が少ない可能性が最も高いです。しかし、食物とサプリメントから摂取するマグネシウムの量を合わせると、マグネシウムの総摂取量はほとんどの場合推奨量を超えます。
充分にマグネシウムを摂取しなかったらどうなりますか?
短期間では、マグネシウムの摂取量が少なすぎても明らかな症状は現れません。健康な人で摂取量が少ない場合、腎臓が尿中へのマグネシウムの排出量を制限することでマグネシウムを保持します。しかし、長期間マグネシウムの摂取が少ないと、マグネシウム欠乏症につながる可能性があります。さらに、一部の症状・疾患や薬も、身体がマグネシウムを吸収する力を妨げ、体から排出されるマグネシウムの量を増加させるため、マグネシウム欠乏症につながる可能性があります。マグネシウム欠乏症の徴候は、食欲不振、悪心、嘔吐、疲労、脱力感などがあげられます。極度のマグネシウム欠乏症は、しびれ、刺痛、筋痙攣、てんかん発作、人格変化、および不整脈を引き起こすことがあります。
以下の特定の集団では他と比べて充分にマグネシウムを摂取できていない可能性があります:
- 消化器疾患(クローン病、セリアック病など)のある人
- 2型糖尿病の人
- 長期にわたるアルコール依存症の人
- 高齢者
マグネシウムが健康に及ぼす影響にはどのようなものがありますか?
マグネシウムが健康にどのような影響を与えるのかを解明するための研究が行われています。以下は、研究成果の例です。
- 高血圧と心疾患
- 高血圧は心血管疾患および脳卒中の主要なリスク因子です。マグネシウムの補充によって、わずかですが血圧が下がる可能性があります。食事でより多くのマグネシウムを摂っている人は、一部の心疾患や脳卒中のリスクが低いことを示す研究があります。しかしこれらの研究の多くでは、そのほかの栄養素と比較してその効果がどの程度マグネシウムによるものなのかがわかっていません。
- 2型糖尿病
- 食事でのマグネシウム摂取量が多い人は、2型糖尿病を発症するリスクが低い傾向があります。マグネシウムは体が糖を分解するのを助け、インスリン抵抗性(糖尿病につながる状態)のリスクを減らす可能性があります。研究者は、すでに2型糖尿病を患っている人がマグネシウムの補充で疾患をコントロールできるかどうかを研究しています。マグネシウムが糖尿病の治療に役立つかどうかをもっとよく理解するために、さらに多くの研究が必要です。
- 骨粗鬆症
- マグネシウムは健康な骨にとって重要です。マグネシウムの摂取量が多い人は骨密度が高く、骨折や骨粗鬆症のリスクを減らす上で重要です。高齢の女性は、食物やサプリメントからより多くのマグネシウムを摂取することで、骨密度が改善する可能性があります。マグネシウムの補充が骨粗鬆症のリスクを減らしたり、骨粗鬆症を治療したりするのに役立つかどうかについてもっとよく理解するために、さらに多くの研究が必要です。
- 片頭痛
- 片頭痛を抱えている人は、血液やそのほかの組織のマグネシウム値が低い場合があります。複数の小規模研究で、マグネシウムの補充が片頭痛の頻度をわずかに減らす可能性があることが認められました。しかし、この目的でのマグネシウムの摂取は、医療スタッフによるケアの下でのみにすべきです。マグネシウムの補充が片頭痛のリスクを減らしたり、片頭痛の症状を緩和したりするのに役立つかどうか評価するために、さらに多くの研究が必要です。
マグネシウムが害を及ぼす可能性はありますか?
食物に自然に存在するマグネシウムに害はなく、制限する必要もありません。健康な人は、余分なマグネシウムを腎臓で尿中に排出することができます。しかし、サプリメントや薬に含まれるマグネシウムは、医療スタッフが推奨しない限り、上限を超える量を摂取してはいけません。
サプリメントおよび薬から摂取するマグネシウムの1日の上限は次のとおりです。多くの年齢層で、上限は推奨量よりも低いと考えられます。これは、食物、サプリメント、薬などのすべての摂取源のマグネシウムが推奨量に含まれるためです。上限には、サプリメントおよび薬から摂取するマグネシウムだけが含まれます。これらには、食物に自然に存在するマグネシウムは含まれません。
年齢 | サプリメントおよび薬に含まれるマグネシウムの上限 |
---|---|
生後0-12カ月 | 設定数値なし |
子供1-3歳 | 65 mg |
子供4-8歳 | 110 mg |
子供9-18歳 | 350 mg |
成人 | 350 mg |
サプリメントや薬からのマグネシウム摂取量が多いと、下痢、悪心、腹部痙攣を引き起こす可能性があります。マグネシウムの過剰摂取は、不整脈や心不全につながる可能性があります。
マグネシウムとの相互作用で知っておくべきものはありますか。
マグネシウムの補充は、一部の薬と相互作用したり、妨げたりする可能性があります。ここでは、例をいくつか紹介しています。
- 骨粗鬆症の治療に使用されるビスホスホネートは、多量のマグネシウムを含むサプリメントや薬を摂取・服用する直前直後に服用すると、吸収されにくくなります。
- 抗菌薬は、マグネシウムを含むサプリメントを摂取する直前直後に服用すると、吸収されない場合があります。
- 利尿剤は、利尿剤の種類によって、尿から排出されるマグネシウムが増えたり減ったりする可能性があります。
- 酸の逆流の症状を緩和したり消化性潰瘍を治療したりするために使用される処方薬は、長期間にわたって服用すると、低マグネシウム血症を引き起こす可能性があります。
- 非常に高用量の亜鉛サプリメントは、マグネシウムを吸収したり制御したりする身体能力を妨げる可能性があります。
あなたが摂取・服用しているすべてのサプリメント、処方薬や市販薬について、担当の医師、薬剤師、そのほかの医療スタッフに伝えてください。利用しているサプリメントが、処方薬と相互作用あるいは阻害を起こす可能性はないのか、あるいはそれらの医薬品が、体内での栄養素の吸収、利用、分解の過程において阻害する可能性がないのかについて教えてくれるでしょう。
マグネシウムと健康的な食事
米国連邦政府が公表している「アメリカ人のための食生活の指針(Dietary Guidelines for Americans)(英語サイト)」では、「栄養は主として食物から摂取すべきです。食物には、健康によいとされるビタミン、ミネラル、食物繊維やそのほかの成分が含まれています。サプリメントは、特定の状況下で特定のビタミンやミネラルの摂取量を増加させるのには役立つかもしれません」と述べています。健康的な食事に関する詳細はDietary Guidelines for Americans(アメリカ人のための食生活指針)(英語サイト) と米国農務省の食事の指針システム、 MyPlate(私の食事)(英語サイト)を確認してください。
マグネシウムに関する詳しい情報を得たい時は?
- マグネシウムに関する一般的な情報:
- マグネシウム含有食物についての詳細な情報:
- 米国農務省(U.S. Department of Agriculture:USDA)のFoodData Central (フードデータセントラル)(英語サイト)
- USDAのマグネシウムの食物またはマグネシウム含有量別栄養成分表(英語サイト)
- サプリメント購入に関するアドバイス:
- 健康的な食事に関する情報:
【免責事項】
ダイエタリーサプリメント室が作成したこのファクトシートは、情報を提供するものであり、医師のアドバイスの代わりになるものではありません。サプリメントに関する興味・関心、疑問、利用法、何があなたの健康全般のために最善かについて尋ねたい場合は、医療スタッフ(医師、管理栄養士、薬剤師など)に相談することをお勧めします。この文書内で言及している個別の商品名は、その製品を推奨しているものではありません。
監訳:大野智(島根大学) 翻訳公開日:2021年3月12日
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