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多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)に対する補完療法について知っておくべき8つのこと
8 Tips: What You Should Know About Complementary Health Approaches for Multiple Sclerosis
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。
英語版最終アクセス確認日:2025年7月
多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)は、中枢神経系の疾患です。多発性硬化症では、自身の免疫系が神経細胞を覆うミエリンを攻撃します。多発性硬化症の症状には、筋力低下(しばしば腕や脚)、腕・脚・体幹・顔面のうずきやしびれ(無感覚)・痛み、ぎこちなさ、倦怠感、視覚障害、排尿コントロールの困難などがあります。多発性硬化症に関するさらなる情報ついては、米国国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke:NINDS)のウェブサイト[英語サイト]をご覧ください。
多発性硬化症には治療法がないものの、従来の治療法の中には、再発の回数や重症度を減らし、病気の進行を遅らせることができるものもあります。多くの多発性硬化症患者は、なんらかの補完療法、特に特別な食事療法やダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)を試しています。ここでは、多発性硬化症に対する補完療法について、知っておくべき8つのことを紹介しています。
- ヨガの実践は、多発性硬化症患者の倦怠感に役立つかもしれないことが、限られたエビデンス(科学的根拠)によって示唆されています。
- 磁気療法(電流で磁場を発生させる機器を用いる療法)は、多発性硬化症患者の痙縮や倦怠感に対して、わずかな有益な効果があるかもしれないことが、限られたエビデンスによって示唆されています。
- 高気圧酸素療法は、しばしば多発性硬化症患者を対象に広く行われていますが、多発性硬化症の治療に高気圧酸素療法を用いることを支持する一貫したデータはありません。
- カンナビノイド(マリファナに含まれる物質)の中には、多発性硬化症患者の痙縮や痛みを和らげるものがあるかもしれません。米国では、多発性硬化症の治療薬として、マリファナ由来の医薬品で米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)の承認を受けたものはありません。しかし、一部の国では、多発性硬化症による痙縮の治療薬として、カンナビノイドを含む口腔スプレー剤「サティベックス」が承認されています。
- イチョウ葉は、多発性硬化症患者の認知機能の改善には役立たないが、倦怠感の軽減には役立つかもしれないことを示す研究報告があります。
- 魚油のようなオメガ3脂肪酸サプリメントが多発性硬化症に役立つかどうかを判断するには十分なエビデンスがありません。
- 7多発性硬化症患者に対する ビタミンD(eJIMサイト内:一般向け・医療関係者向け)サプリメントに関する研究は、相反する結果が得られています。
- 自分の健康を守るために、自分が行っている補完療法について今かかっている医療機関※に相談しましょう。そうすることで、十分な情報を得た上で意思決定をすることができます。
(※補足:原文では、healthcare provider。米国では主に医療サービス等のヘルスケアを提供している病院/医師を指す。また、健康保険会社や医療プログラムを提供する施設等も含む。)
更新日:2025年10月31日
監訳:時信亜希子(京都大学)、大野茜(国立国府台医療センター)、大野智(島根大学)
翻訳公開日:2021年3月12日
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